まずは自己紹介を。
SDN2018に参加しておりましたステージタイガーの虎本です。
しかしながら、まだまだ演劇祭を盛り上げたいんや!!
と、こうしてSDN2019も稽古場探訪ブログを書かせて頂く事となりました。
さて、栄えある一回目は…
劇的集団まわりみち’39の『密会』。
猛暑の中、関西演劇界が誇るド傑作に挑む稽古場に突撃させて頂きました。
そうです。
ご存じない方の為に少し説明させて頂きますと
『密会』は、故•大竹野正典さんの代表作の一つ。2019年は大竹野さんの没後10周年ということもあり、『ぼつじゅう』として全国で様々な団体によりその作品をが上演されています。
大竹野さんの作品は実際に起きた事件をモチーフに、人間の深く優しく切ない想いに触れ、心を大きく揺さぶります。『密会』もその一つ。
かくいう僕も、くじら企画の『密会』を観てこれでもか!と心を揺さぶられた人間の一人。
そうです。僕は観てるんです。
だから、どうしても比べてしまう。
でも大事な事は比べる事ではなくて、
今この作品が上演される事であり、
劇的集団まわりみち’39がこの作品とどう向き合っているか。
稽古場では主人公•慶雲さんを取り囲む集団演技(?)のシーン。
細かく修正を加えながら何度も何度も反復します。
演出の斜さんからは言葉に加え、身体についても頻繁にダメ出しが飛びます。
身体表現を駆使して、もっと主人公の心情を現したい。
さらに今回は舞台美術ではなく『空間構成』という概念のもと、應典院という立地を活かした新たな試みもあるとか…
ビジュアル面から作品を練り上げます。
斜さんはこの作品を『ただ実際に起きた事件をワイドショー的に好奇にさらすように扱うのではなく、その環境、歴史といったものを丁寧に、大事に、多角的に表現していきたい』と言います。
当然重ねるごとに稽古はヒートアップ
斜さんからは
『慶雲、テメーは育ちがいーから、もっとヤカラみたいにガラ悪く座れよ!』(やや虎本が話盛ってます)と檄も飛びます。
『今の手の動き、パリッとしてるから。ニュルっと感がたんねーから! ニュルっとさせろよ!』(だいぶ盛ってます)
とニュアンス上等なダメ出しも出ます。
ちなみに、『この日イチのダメ出され男』こと、慶雲さんはこの作品の役作りの為に実際に東京•深川まで赴き、その風景を身体にしみ込ませてきたとか…。
演出家•斜さんも
主演•慶雲さんも
外と中から、主人公の人間性を表出させようとTRY&ERRORは続きます。
あ、言いそびれてましたね。
主演の慶雲さんが演じるのは、日本の犯罪史にも名を残す、とある事件の犯人です。
どう観ても善人。
どう観ても育ちがいい。
そんな慶雲さんがこの役にどうアプローチするか、そこも見所です。
ピリピリした空気の中、稽古は別シーンへ。
打って変わって会話主体の熱量の高い風景が展開されます。
あれ、脱いだぞ。
また脱いだぞ!!
会話の内容も面白く、笑い声が稽古場に響きます。
そうです。『密会』という作品、ただ重苦しいだけではなくコミカルなシーンも多々あります。
どうすればより面白くなるか、反復稽古が続きます。
といった所で終わりの時間。
迫る通し稽古に向けて、さらに研鑽を重ねよう!と声がかかり稽古は終わりました。
オリジナルの『密会』を観たことのある出演者がほぼおらず、皆プレーンかつニュートラルな視点でこの作品に向き合っている…という印象を受けました。新たな密会が生まれる…そんな予感です。
真面目、誠実、実直。そんな稽古場でした。
けど。
あぁ通し稽古が観たい。
あえてネタバレ的なことを言いますが、この作品は
壮絶なラストシーンが強く印象に残ります。
僕は観た時、しばらく客席から立ち上がる事が出来ませんでした。
オリジナルを観ていない劇的集団まわりみち’39が、どんなラストを創出するのか?
今日観たシーンから、どうラストへ繋がっていくのか?
あの好青年•慶雲さんがどう舞い踊り、牙を剥くのか。
それは本番までのお楽しみ、ということで。
ステージタイガー
虎本剛