ステージタイガーの虎本です。
劇団有馬九丁目『スターラインエクスプレス』の稽古場を探訪してきました。
この日は音響スタッフを交え、細やかなシーンの反復をされていました。
写真のシーンは銀河系の裁判?のシーンと思われます。
とにかく俳優がよく動く。よく喋ります。
沢山あるテキストにリズムや音声の『クセ』をあえてつけ、ハイテンポなシーンが展開されます。
SF設定のため耳慣れない単語に溢れていますが、耳心地がいい台詞回しが続きます。
しかしそれよりも…興味深いのは
喋っていない…
他の俳優もずっと舞台上にいる!
という演出です。
そうです。この作品、キャラとして登場していない俳優も常に舞台で存在し何か表現しているのです。
時に背景、時に精神世界、時にエネルギーそのもの。
ハケない。どこで給水ポイントを作るかをシビアに考えておられました。
度々オープンセサミやSNSなどで見た、運動量多めのアップや基礎練習はこのためだったのか!
しかもその動きはある程度俳優の自由に任されており、それを見ながら演出家のザキ有馬が整理していきます。
なので、稽古はスクラップ&ビルド。
試しては検討し、壊し、創造する。
時間はかかりますが、皆でシーンを分厚く塗り固めていく稽古をされています。
この日も稽古がよく止まってディスカッションする瞬間が多くありました。では、何に時間を割いているのか。
それは…
ザキ有馬の『ザキ用語の解読』でした。
あ
ここからは雰囲気と口調を変えます。
だって作演出家のザキ有馬は僕の大学の後輩で、ステージタイガーの劇団員でもあるので。
ザキは独特の世界を持っています。
僕は昔からそれを『青い初期衝動』『リビドー妄想童貞ワールド』なんて呼んでいます。
男前なのに!
なんだか内向的で!
尖ってて!
他人に理解されづらい世界を大事にしている!
それがザキという男。
うちの女性劇団員からは『残念イケメン』と呼ばれた事もあります。
泣けるぜ!
そんなザキの演出ワードは時として俳優やスタッフに大きなクエスチョンを投げかけます。
今日も稽古場を探訪するフリをして、ザキの言葉をひたすらメモしまくりました。
その一覧です。
『ここで星を燃やして欲しいんです! 台本には無いんですけど。炎的なモノが欲しいんです。ドカッといってゴーっ!って。わかります? ここは精神世界なので。』
『ほらこのシーン、綾波レイのクローンがいっぱいいるアレだよ』
『お話、音的にも、演出的にも波を打つ所が多いので、キュッとする所を作りたいね。このままじゃ客席スヤスヤタイムができそうなので、どこかでキュッとさせる所を作って欲しいです。』
『その台詞、針にシュッと通すような言い方をして欲しいな!』
『ほら、孫悟空がお釈迦様の掌にいる感じで。わかんだろ。』
わかんねえよ!
ザキ曰く、この作品には台本以外に設定資料集だけで一冊の本が出来るくらいとか…
わかんねえよ!
もはやザキの頭がエクスプレス。誰よりも超特急で駆け抜けとるやないか!
そんなザキに聞いた今回の作品は『超銀河新幹線にまつわる、心に突き刺さる作品』との事。
でもね。
俺は稽古見てて思ったよ。
テーマは『愛』なんじゃないかな?
今日聞いた難しい言葉が並ぶ台詞の中で、僕が一番心に残ったのは『そんなあの子を愛している』というような台詞。
色んな言葉で塗り固めて、色んなエネルギーをまとって走り抜けるけど、そこに残るのは宇宙の中心にある小さな愛の物語なんじゃないかな?
複雑に見えて、実はシンプルなんじゃないかな?
遠回りして、遠回りして、たった一つの光に辿り着く話なんじゃないかな?
だって、ザキ有馬は残念なイケメンだけど、人を思う心は誰よりも強いからね。
な、ええ事言うやろ、先輩は?(苦笑)
真っすぐ進んで来れなかった人、傷つき何かを捨てて飛び出したい人、應典院に来られたし。走っても走ってもゴールに辿り着けないザキ有馬のエネルギーがあなたを宇宙の果てまでお連れします。
さあ、2週間後。
まもなく発車致します。
な、ええ事いうやろ、先輩は?