SDN稽古場探訪No.13-2 東洋企画

稽古場探訪
SDN2018稽古場探訪

ステージタイガーの虎本です。

第九回東洋企画

TO4O KIKAKU9th winter/spring2019

『偽曲 安寿と厨子王』の稽古場を探訪してきました。

【はじめに】

皆様、『山椒大夫』という文学作品をご存知だろうか?

森鴎外によって書かれた教科書にも載る有名作品である。

タイトルにもある安寿と厨子王はその登場人物。

そう『偽曲』とある通り、この作品は山椒大夫をモチーフとしているのである。

そんなん知らんわ! 

と思われた方…

安心していただきたい。

この作品は知らなくても楽しめるのである。

純粋に演劇作品として浸れるのである。

なぜなら、山椒大夫に26人も登場人物出てこないから!

である。

山椒大夫にカタカナや英語表記の役なんて出てこない。

場面転換も驚く程多い。

大幅な東洋企画の創作が含まれている。

そして26名。

皆様、「多い」と驚かれた事だろう。

実際、多かった。

稽古場を開けた瞬間、筆者は驚いた。

26名が稽古場で全力でひしめいているのである。

 

正直に言おう。酸素が薄かった。
男優達からは、やや異臭もした。

休憩時にコンビニで揚げ物や汁物を大量に購入し稽古場に匂いを充満させた人間には殺意を覚えた。

数日経った今も、まだ筆者の中で稽古場のあの熱気と香りが回転しているのである。

脳を整理する為にも本稽古場探訪blogを以下の3つの論点から述べさせて頂きたい。では本題に入らせていただく。

【東洋企画稽古場① 俳優が常に喋っているのはなぜか?】

稽古場は非常に賑やかであった。

それもそのはず、俳優達が常に喋っているからである。

台詞を…ではない。

演技プランや、アイディアについて常にあちこちから声が上がるのである。

「この方がいいんじゃないか」「いやあっちの方が面白いはず」と意見が飛び交い続けるのである。
静寂など一切ない。

演劇の稽古でこれほどのブレインストーミングが常時行われているのを筆者は初めて見た。

伊達に人数が多いわけではなく。その数の頭脳で作品を紡ぎあげていくのである。

それを認め、コントロールする作演出家 東 洋君は、度量があり懐が深いと思われる。

【東洋企画稽古場② 最も喋る俳優は誰か?】

懐深き演出家、東 洋。

そのコントロール下において、いったい26名の中、誰が一番発言をするのか?

その者こそ、この作品における稽古場での影の中心人物ではないか?

そのような仮説を立て、筆者は聞き耳を立て、カウント。

発言内容の分析を試みた。

結果。一番喋っていたのは

東 洋君であった。

その割合は(ダメだし6 ひとりごと3 よくわからない擬音1)。

俳優の誰よりも喋る東 洋君。

※東 洋君も出演者


↑ダメ出し中の演出家 東 洋。衣装ネタバレを考慮して隠した石井さんとは違ってそのまま載せてしまう。許して欲しい。

俳優が演技中もおかまいなしに『こうして、ああして』とオーダー。

「いやいや急に言われても、こっち喋ってるから」

という俳優の思いなどどこ吹く風。

誰よりも早く滑舌よくボキャブラリ豊かに喋るのである。

筆者はこれを

東 洋による『リアルタイムダメだし』

と命名。

懐が深い、と前述したものの、本当は自身が多量に喋る事を認可する為の制度ではないか、とも考えられる。

【東洋企画稽古場③ 稽古場に山椒大夫が存在する?】

東 洋君の過剰かつ高速な指示のもと、次々と作られていくシーン。

しかし幾ら多数のアイデアが出たとしてもそれを判断し、採用するのは演出家一人なのである。

特に今回は、言葉遊びを重視した台詞、『見立て』を多用した多面的な演出が冴え渡る。

東 洋君の感覚、リズム感が全ての物差しとなる。

何度も繰り返し、創造し、壊す。

言葉にすれば簡単だが、実際の作業は多くのエネルギーを費やすのである。

しかし、俳優の目は常に輝いていた。
さらに新たな課題を探せと言わんばかりに。

東 洋。彼の統率力とカリスマ性こそがこの団体の長所なのだ。

というものの。

東 洋君は俳優にキレられていたのである。

散々、長時間動き、試行錯誤しながらシーンを作ったにもかかわらず、その動きが舞台構造上、難しい可能性が最後にわかる。

それを知った俳優が突き刺すように放つ。

「そんなん、もっとはよ言うとけや!」

静寂に包まれる稽古場。

10時間近い稽古に及んだ俳優の生の声を、筆者は聴いた。

カリスマのたじろぐ姿を筆者は見た。

そして同時に気付いた。

まさにこれは奴隷と思われていた安寿と厨子王に反旗を翻された荘園領主•山椒大夫の姿そのものではないか。

稽古段階において、既に本作へのオマージュは達成されていたのである。

おそるべし。

【まとめに変えて】

以上、何となく論文ぽく、文学っぽく、でもまったくそんな感じでもなく本論を述べてきた。

それもこれも筆者が東洋企画、及び東 洋君に影響を受けたからである。

『あ、頭良さそうだな。あ、でもそんな難しくないや。ワクワクするな。五感で楽しめるぞ!』

そういう人物達であり、作品なのです。

何よりこの創作過程にこそ東洋企画のオリジナリティ、魅力が溢れていると感じました。

 

あと本番まで2週間の稽古の中でどこまで膨らんでゆくのか、楽しみでなりません。

是非ぜひ、皆様もお楽しみに。

虎本の劇団 ステージタイガーの仲田クミも出ています。
やっぱりよく喋ります。

合わせて観てあげて下さいまし。